論点

第1回 太陽とともに起き眠る 2006.1.16

 喧騒な都会を去り、静かな山里に移り住んで早くも三年目の正月を迎えた。我家からは韓国岳を中心に霧島連山を遠望することが出来る。朝起きると居間の障子を 開けて、霧島連山に昇る朝日を拝むのが日課となった。今日も太陽の恵みを受けて生きることにそっと手を合わせ感謝する。
 地球全体が太陽から受ける膨大なエネルギーは、地表や海面で熱に変わり、一部が風や波、海流などを起こすエネルギー源となる。化石燃料も太陽エネルギーが地中に蓄積されたもの。地球上の植物は太陽エネルギーを受けて光合成を行い生長する。それを動物たちが食べて生命を維持する。人間はそれらの恩恵を受けて生きている。
 このように太陽のお陰で、地球上の生きものすべてが生きているというごく当たり前の真理を、頭では常に理解しておきながら、現役時代の多忙な都会生活では、つい忘れがちであったように思う。農業を営む私の日々は、「太陽と共に起き、太陽と共に眠る」平凡な暮らしの繰り返しである。朝、東の空に昇る太陽を拝んだ後、洗顔し、野鳥の声を聞きながら木刀で素振りした後、一日が始まる。山羊、合鴨、鶏などの家畜の餌やりを、早朝六時頃から始める。七時過ぎ朝食を済ませた後、新聞を読み、お茶を飲みながら妻と今日の一日の農作業の打ち合わせをする。その日の天候により、作業内容は弾力的に変化する。つまりその日の農作業は太陽の照り具合で決まるのだ。夕方、日の沈む頃まで働いた後、母屋に上がって風呂に入り、一日の汗を流す。外での仕事は日の長い夏は夜の七時過ぎ、日の短い冬は五時過ぎに作業は終わる。働いた後の夕食の晩酌(だいやめ)が事のほかうまい。
 晴耕雨読という言葉があるが、これは日々の農作業と暮らしは太陽しだいであるという意味にもとれる。このようにして自然を相手にする農業を始めてからは、太陽を身近に実感する毎日となった。日本の国名の由来は、「日の本」から来ているそうだ。つまり「私たち日本人の命は太陽が元(本)だ」ということ。この「日の本」の「の」が抜けて「日本」という国名になったという。境野勝悟氏は著書「日本のこころの教育」の中で、「日本人とは何か」と聞かれたら、私たちの祖先が命の元が太陽だと知って、その太陽に感謝して、太陽のように丸く、明るく、元気に生きるようになった、これが日本人だと答えなさい。だから古代の人は太陽のことを「お蔭様」とも言っていた。みんなが同じ太陽の生命で生きているのだから、みんな仲良くしないといけない。主義や思想が違ってもいい、それぞれが持っている才能が違ってもいい、お互いを認め合って、この共通の太陽の生命を喜びあって仲良く生きる、これが私たち日本人の生き方の原形である。競争ばかりして、弱いものをたたいて、強いものだけが威張り、勝ち組と負け組をつくるのは、太陽の生命を感謝しあって生きようとした日本人の本来の生き方ではなかったはず、というようなことを境野氏は述べている。

第2回 防犯の地域力は人間関係の中に 2006.2.13

第3回 マネーゲームには無縁の農業 2006.3.20

第4回 平成の農政大改革への危惧 2006.4.24

第5回 感謝して命をいただく 2006.5.22

第6回 農の風景「棚田」を守る 2006.6.19

第7回 食料輸入超大国の行方は 2006.7.24

第8回 二度と戦争を繰り返さない 2006.8.28

第9回 田舎暮らしブームに思う 2006.10.2

第10回 唱歌「故郷」の豊かな世界 2006.10.30

第11回 高校・大学教育をゆがめるもの 2006.12.4